結晶組織制御グループ

金属材料の結晶組織を制御し、材料に卓越した機能を持たせる

金属材料の結晶組織は材料物性に大きな影響があり、結晶組織を制御することにより様々な機能材料が開発されています。結晶粒径が小さくなると、材料強度が向上することが知られており、結晶粒径をサブµm~数µmサイズに調整した超微細粒鋼が注目されています。超微細粒鋼は合金成分を追加することなく機械特性を向上させることが出来るので資源問題やリサイクル問題への対策として有効です。さらに近年では微細な機械構造を有するマイクロマシンや医療機器への応用が期待されており、様々な鋼種の超微細粒鋼が求められています。

本研究では超微細粒鋼を製造するために簡便で効率的な結晶組織性制御加工法の開発を目的としています。通常は圧延加工にて強い圧縮ひずみを材料に与え熱処理により再結晶を誘起させるのですが、当研究室では切削加工で切屑に加わる強剪断ひずみを利用する方が結晶粒微細化に有効であることを見出しました。切削では均一な変形組織が生じており、これが微細な再結晶粒の生成に寄与していると考えられます。そこで、何故、切削による剪断ひずみが結晶粒微細化に有効なのかを実験と理論解析により解明し、実用的な微細結晶粒製造法を確立することを目指しています。

結晶内の塑性変形が静的再結晶を誘起する機構を明らかにするため、単結晶純鉄を試験片として用い引張変形を加えた場合の引張荷重変化、結晶方位分布変化、さらに熱処理した時の再結晶粒の発生成長過程を実験的に調べています。また単結晶試験片の変形を結晶塑性有限要素法にてシミュレートし、実験との比較により結晶核の発生および粒成長を支配する力学的因子を明らかにすることを目指しています。このためには結晶の変形を正確にシミュレートする必要が有り、このためにベイズ最適化による機械学習を用い結晶塑性パラメータを決定する手法を開発しました。今後さらに実験データを増やし、解析精度の向上ならびに力学的因子の解明を進めていきます。